[質問] 過去に作った質の低い事例を修正したい
本コラムでは、お客様から頂いた質問を、企業が特定されないように一部修正したうえで、回答したいと思います。
ご質問内容
クラウドソーシングのライターにお願いして、3年間で導入事例を30件作成しました。しかし、今になって読み返すと、ライターに専門性がなかったこともあり、事例が薄っぺらい内容となっています。
既に作成完了している、質の低い事例は修正してもよいでしょうか。また、修正する場合はどのような点に気をつければよいでしょうか。
回答
「事例の作成件数やスケジュールに追われた結果、また作成予算を極端に節約した結果、質の低い事例が出来上がった」というケースは少なくありません。
「質が低い事例」に対して、取り得る対策は以下の4つのいずれかです。
- 何もしない(放置)
- 修正
- 新規作成
- 非表示にする(退役させる)
現在見直しても価値がある事例であれば、「修正」または「新規作成」を推奨しています。逆に、そこまで価値がない事例であれば、「何もしない」「非表示にする」を推奨します。
以下でご説明します。
価値がある事例を「質が低いまま放置」するのは機会損失
まず、「価値がある事例とは何か」ですが、以下の項目のうち、1つでも当てはまれば価値がある事例です。
- 有名企業が登場している
- 大規模事例になっている(規模または金額)
- 導入内容が先進的(理想的な組み合わせの製品導入をしている、など)
- 他事例と比べてアクセス数が多い
こうした価値ある事例を、質が低いまま放置することは「大きな機会損失」です。質が高い事例であれば問合せにつながったであろう顧客を、みすみす見逃しています。
上記のいずれかに当てはまれば、既存事例を「修正」または「新規作成」を推奨します。事例を修正することで、アクセス数増加、問い合わせ増加が見込めるだけでなく、商談や展示会などで利用した際にさらなる価値を生む可能性が高いためです。
「既存事例の修正」か「新規作成」か
では、「既存事例をもとに修正したほうがよいか」「ゼロから新規作成したほうがよいか」を考えてみましょう。
既存事例の修正 | ゼロから新規作成 | |
---|---|---|
かかる時間 | 短い | 長い |
コスト | 安い | 高い |
品質 | 上がる | 劇的に上がる |
顧客の作業負担 | 少ない | 大きい |
理想的には、品質が劇的に上がる「新規作成」を推奨します。しかし、新たに取材しなおして新規作成するには、「顧客を説得する」必要があります。ゼロから事例作成するとなると、顧客側の作業負担が大きいためです。
顧客からすると、事例作成への協力は「ボランティア」のようなものです。時間と労力がかかる割に、自分にメリットはさほどありません。このため、顧客から「以前、事例作成の協力したのに、なぜまた事例を作るのか、また協力しないといけないのか」と言われることは間違いありません。
これに対して、きちんと回答する必要があります。もちろん、「現在の事例作成を頼んだライターが今ひとつでした」と正直に回答する必要はありません。
例えば、以下のように説得するのはどうでしょうか。
- 時間の経過が理由
- 以前作成時から時間が経過して、利用環境も変わったので、事例をアップデートしたい。
- 機能追加・変更が理由
- 以前作成時から、使っている製品の機能が変わっている(追加されている)ので、事例をアップデートしたい
- 売った恩から泣き落とし
- 先日トラブルの時に色々ご支援させていただいたので、別件ではありますが、事例のアップデートを助けていただけませんでしょうか。
これで説得できれば、新規事例作成に進むのがよいでしょう。
逆に、顧客から「新規事例作成は工数的に難しい」と断られた場合は、「既存事例の修正」を行いましょう。
「時間も経過していますし、使っている機能なども変わってきているので、貴社の事例を修正したいと思います。当社で修正版の原稿を作成しつつ、いくつか質問させていただくかも知れませんが、ご協力お願いします。ご質問にお答え頂き、原稿の最終レビューを行って頂く以上の手間はおかけしません」
このようにお伝えして、修正作業を開始します。
事例の修正はどのように行えばよいか
事例を新規作成するポイントについては、無償でご提供しているダウンロード資料をご覧頂くとして、今回は既存事例を修正していく作業を見ていきましょう。
1.修正すべきポイントの確認
はじめに、顧客から事例修正についてOKが出たら、既存事例を読んで、何がまずいかをチェックしていきましょう。
- 事例登場企業がどのような会社かが記載されていない
- 課題を深堀りできていない
- 検討を深堀りできていない
- テスト~導入を深堀りできていない
- 導入した結果ともたらされた価値について深堀りできていない
- 今後の展望が記載されていない
- 文章が読みにくい
- 流れがわかりにくい
- 数値で価値を表現できていない
- システム構成図などの図表がない
- 事例出席者が1人で、偏った内容・回答になっている
- 「友人だったので、応援しようと思い導入しました」のように、製品の価値訴求に直結しない内容が記載されている
- ホームページ掲載のみで、PDFや印刷版を作成していない
おおむね、上記のうちの複数が該当するのではないでしょうか。これらが修正すべき(または新たに盛り込むべき)ポイントとなります。
2.事例修正者のアサイン
事例修正は、「自社で行う」もしくは「外部企業を利用する」の両方があります。
自社で行う場合は、「理想形を思い浮かべた上で、足りない要素を埋めていける」「文章力・構成力がある」ことが大切ですが、「事例修正作業を行う時間がある」ことも同様に重要です。
事例作成は、それ自体がすぐ売上に直結するわけでなく、作成が遅れても誰かが困ることも少ないため、後回しにされがちです。多忙すぎる方をアサインすると、おそらく別な業務に追われて、修正が遅れに遅れる可能性が高いです。
一般的に企業では、「能力がある方は忙しい」ので、「能力がある方が忙しくないタイミングで依頼する」のは難しいですが、大きな業務の合間などに行ってもらうのがよいでしょう。
外部企業を利用する場合は、コストはかかりますが、社内リソースは消費せずに、あらかじめ定められたスケジュールで納品されるので安心です。ただ、「コストを下げすぎると、再び質が低い記事が納品されてくる」可能性が高まります。特に、クラウドソーシングでのライター探しは「ばくち」のようなものなので、注意が必要です。
費用感が許せば、ある程度コストがかかっても品質を担保できそうな会社に依頼すべきでしょう。
3.修正作業の詳細
事例の修正作業とは、具体的には2つです。
1つめは、「現在ある内容をもとに事例全体を再構成する」ことです。
- 分かりやすく、読みやすい文章に修正する
- 記載内容順(並び順)を変える
- 客観的な事実を追記する
- 事例にある情報をもとにシステム構成図やフロー図などを作成する
2つめは、「追加で記載すべき内容の質問リストを作成する」です。
例えば、「なぜこの製品を導入したのか、という課題が不明確」という場合は、「以前のプロセス詳細」「問題点」「時間」「コスト」「工数」「同時期の全社的な課題とプロセスとの関連」などを質問リストに加えます。
質問リストを作る上で注意すべきなのは、以下です。
- 1問1答でリストを作成する
- 基本的に、感覚的な内容でなく、事実を確認する
- 解釈の余地のない質問にする
- 質問文は短くする(長いと読むのが大変)
- 「もしお電話のほうがよろしければ、ご都合のよろしい時にお電話差し上げます」と、電話回答オプションも伝える
4.レビュー・掲載
事例を再構成し、作成した質問リストに回答があれば、その内容を盛り込み、初稿が完成します。社内でレビューした後に、顧客レビューに回し、帰ってくれば掲載可能となります。
もし、印刷版(InDesignやIllustrator)やPDF版を作る場合は、これらを作ってから顧客レビューに同時に回すと時間の節約となります。
まとめ
事例作成を行うチャンスは限られています。同じ顧客に何度も事例取材を行うのは現実的ではありません。
よって、事例作成を行う際には「この方法で、品質が高い事例が出来上がるかどうか」の確信を持ってから、作成作業を進めるのがよいでしょう。これは、社内で作成する場合も、外部に依頼する場合も同様です。
ただ、もし出来上がった事例の質が低かったとしても、上記の方法である程度修正して、質を引き上がることができます。もし、貴社の既存事例を見直したい、品質を高めたいという悩みがありましたら、ぜひ当社にご相談ください。
執筆者: 村岡 英一 (事例ファクトリー代表)
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